洞窟に葬られた女性の周りに「ヒトの歯」226本が供えられていた――マヤ文明の驚くべき埋葬習慣

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古代マヤでは、ご先祖さまは「家の床下」に眠っていた

古代マヤのエリートは「2か所」に埋葬されていた古代マヤのエリートは「2か所」に埋葬されていた / 左が洞窟の埋葬、右がムクレバル・ツルの広場の墓の想像図です。左の絵に散らばる赤い点の一つひとつが歯にあたります。/ Credit:Esther S. Brielle et al., bioRxiv (2026) / CC BY 4.0

日本では、亡くなった家族は墓地のお墓に納められ、お盆やお彼岸になると、生きている家族がそこへ会いに行きます。

ご先祖さまは、ふだんの暮らしから少し離れた場所にいるわけです。

ところが古代マヤでは、こうした屋外の共同墓地が見つかっていません。

亡くなった家族は、自分たちが暮らす家の床下に葬られていたのです。

日本と古代マヤ、ご先祖さまの居場所日本と古代マヤ、ご先祖さまの居場所 / 左が日本、右が古代マヤです。右の家の下、土の色の部分にある黄土色の部屋が墓にあたります。/Credit:川勝康弘

この習わしは、王から庶民まで、身分を問わず広がっていました。

マヤでは身分が家系と強く結びついていたため、ご先祖さまを足元に置いておくことは、「自分たちはこの家系の者だ」という証にもなりました。

しかもマヤの人々は、一度ふさいだ墓をあとから開けてご先祖さまの骨に手を加え、ときには骨の一部を取り出して別の場所へ移していました。

墓をあとから開けて、骨の一部を取り出す墓をあとから開けて、骨の一部を取り出す / 家を横から切った断面です。黒い矢印は床下の墓から階段をのぼり、戸口を抜けて図の外へ向かいます。/Credit:川勝康弘

墓の中には、出入りするための入口や階段を備えたものまであります。

骨になったご先祖さまも、まだ家族の一員だったのです。

そんなマヤの人々が、家の床下と並んで特別な意味を持たせていた場所があります。

洞窟です。

洞窟は、死者やご先祖さまが住む世界「冥界」への入口であり、ご先祖さまと言葉を交わせる場所だと考えられていました。

ただし人が暮らす場所ではないため、洞窟に人を葬ることは、家の床下に比べるとずっとまれでした。

中米ベリーズ南部の険しいマヤ山地にある「バツブ洞窟(Bats’ub Cave)」は、そのまれな例の1つです。

洞窟に葬られた女性と226本の歯洞窟に葬られた女性と226本の歯 / バツブ洞窟の埋葬の想像図です。赤い点の一つひとつが、女性のまわりに置かれていた歯にあたります。/ Credit:Esther S. Brielle et al., bioRxiv (2026) / CC BY 4.0

小さな丘の中腹に口を開けた目立たない洞窟ですが、ここには西暦250〜400年ごろ、1人の大人の女性が葬られました。

女性の頭は取り外され、かわりに、ヒスイの玉を1粒入れた土器の底の部分が置かれていました。

女性自身のものかもしれない頭の骨のかけらは、骨盤のあたりから見つかっています。

そばに供えられた器には、仰向けに横たわる死者が描かれ、その頭はおなかの上に乗っていました。

ほかにも、カカオ豆5粒を入れて伏せた鉢や、マヤの神話で冥界の神々の持ち物とされる木製の小さな腰掛けが添えられていました。

どれも冥界の場面を思わせる品々で、彼女が王族にもふさわしい扱いで葬られたことを物語っています。

頭のかわりの土器と、まとまって置かれた歯頭のかわりの土器と、まとまって置かれた歯 / 歯が体のどこに何があったかを示す目安/Credit:川勝康弘

さらに奇妙なことに、女性の骨盤のまわりや首もとには、人間の歯がまとまって置かれていました。

散らばっていたものも合わせると、その数は226本にのぼります。

大人の歯は1人32本ほどですから、何人もの歯が集められていたことになります。

マヤの遺跡ではこうした歯の供え物がこれまでにも見つかっており、数百本に及ぶこともありました。

しかし歯の形を眺めるだけでは、持ち主が誰なのか、持ち主どうしがどんな関係だったのかまではわかりません。

女性を取り囲んでいた歯は、いったい誰のものだったのでしょうか。

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