卵の中のヘビは圧倒的に「右巻き派」だった――なぜなのか?

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卵の中で育ちはじめたヘビの赤ちゃんは、ほぼ全員が右巻きだった

画像Credit:Raul Diaz, Californai State University Los Angeles

ヘビの絵を描いてくださいと言われたら、多くの人はとぐろを巻いた姿を描くのではないでしょうか。

実はヘビは、卵の中にいるころから、すでにとぐろを巻いています。

殻を開けると、ばねのようにきっちりとらせんを描いた赤ちゃん(胚)が収まっているのです。

ヘビの胚は、黄身から離れる向きへ何重にも巻くヘビの胚は、黄身から離れる向きへ何重にも巻く / ヘビ胚と黄身の配置は普通の脊椎動物と大きく違っています/Credit:川勝康弘(Weber et al., Current Biology, 2026をもとに作成)

細長い体を持つ脊椎動物はほかにもいますが、その多くの胚は、卵の黄身の表面に沿って伸びるか、体をひと折りしてループを作る程度にとどまります。

黄身から離れる向きへ、これほどきつい巻きを何重にも作るのは、ヘビの胚だけです。

巻き方には、胚を背中側から見て、頭から尾へたどったときに時計回りに巻く「右巻き」と、その逆の「左巻き」の2通りがあります。

どちらになるかが偶然で決まるなら、右と左はおよそ半々になるはずです。

右巻きと左巻きの見分け方右巻きと左巻きの見分け方 / どちらも背中側から見た模式図で、外側の端が頭、らせんの中心が尾です。体の上の白い三角は、頭から尾へ進む向きを指しています。左右の2つは、鏡に映し合った関係です。/Credit:川勝康弘(Weber et al., Current Biology, 2026をもとに作成)

ただ、ヘビの胚が実際にどちら向きに巻いているのかを、種ごとにまとめて数えた調査は、これまで見当たりませんでした。

この調査が始まったきっかけは、2020年の新型コロナによるロックダウンでした。

研究を率いたカナダ自然博物館のテツト・ミヤシタ氏は、研究室にも博物館の収蔵庫にも入れなくなった学生たちのために、家からでも取り組める研究テーマを探していました。

思い浮かんだのが、論文でヘビの胚の写真を見るたびに「右巻きだろうか、左巻きだろうか」と気になっていたことです。

研究チームは、論文に載った写真や博物館の標本写真、研究室で育てた胚の記録などをかき集め、ヘビ34種と足のないトカゲの仲間5種、あわせて913匹分の胚について、巻きの向きを1匹ずつ記録していきました。

育ちはじめのヘビの胚は、505匹中488匹が右巻きだった育ちはじめのヘビの胚は、505匹中488匹が右巻きだった / 朱色が右巻き、緑色が左巻きです。左巻きのマスは最後の行にまとめてあります。数えたのはヘビ34種の胚です。/Credit:川勝康弘(Weber et al., Current Biology, 2026をもとに作成)

数えてみると、結果は半々どころではありませんでした。

育ちはじめ(アフリカイエヘビでいえば産卵から2週間ほどまで)のヘビの胚505匹のうち、右巻きは488匹で、左巻きはわずか17匹だったのです。

アフリカイエヘビでは146匹すべてが右巻きで、ペットとしておなじみのコーンスネークでも、左巻きは200匹あまりのうち9匹だけでした。

十分な数を調べられた種のなかに、育ちはじめの胚が左巻きに偏った種や、右と左が半々に分かれた種は1つもありませんでした。

一方、アシナシトカゲやミミズトカゲなど、足のないトカゲの仲間の胚には、はっきりした偏りは見られませんでした。

研究チームは、育ちはじめのころから極端に細長くなるのがヘビの胚だけであることが、この違いにつながっているのではないかとみています。

では、ヘビの赤ちゃんはなぜ、これほどきつく、しかも同じ向きに巻かれているのでしょうか。

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