【分析】イラン和平協議で「終わった」発言、トランプ氏が興じる経済の火遊び

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(CNN) 3週間の脆弱(ぜいじゃく)な和平によって、トランプ米大統領はある程度の時間と、イランに対する影響力を手にした。とはいえ、それはそこまで大きなものではなかった。

トランプ氏が6月18日にイランとの了解覚書に署名した後、原油価格は急落し、先週までには戦争前の水準を下回った。ホルムズ海峡がある程度再開されたことを市場は歓迎。何カ月も足止めされていた原油が、ペルシャ湾から徐々に流れ始めた。ガソリン価格も、ゆっくりと現実的な水準へ落ち着きつつある。

しかし、海峡が部分的に再開された3週間だけでは、世界史上最大規模の原油供給ショックを乗り越えるのに十分ではなかった。緊急備蓄や商業備蓄を補充するだけの時間も確保できなかった。米国はこれらの備蓄によって燃料を自給し、「経済的大惨事」を回避しなくてはならない。トランプ氏はそのような大惨事の結果、自身が大恐慌時代のフーバー大統領になぞらえられることを恐れている。

今回の中東での新たな交戦が一時的な出来事なのか、それとも全面戦争への回帰なのかは誰にも分からない。トランプ氏は8日、ホルムズ海峡に対する米国の海上封鎖を再開すると警告した。しかし今のところ、危険を承知で出入りしようとする船舶に対して、海峡は依然として開かれたままだ。

とはいえ、もし再び閉鎖される事態となれば、米国経済は望ましくない打撃を受ける可能性がある。

限られた時間での輸送

米コンサルティング会社リポウ・オイル・アソシエイツのアンディ・リポウ社長によると、過去3週間で約2億バレルの原油がホルムズ海峡を通過した。これは世界の原油需要のおよそ2日分に相当する。

もう一つ注意すべき点は、その原油のうち約6000万バレル分がイラン産だということだ。トランプ政権は7日に再度これを制裁対象とした。そのため、買い手は再び取引禁止となるまでのわずか10日間でこれを引き取る必要がある。

海峡は依然開放されてはいるものの、相当のリスクプレミアムが上乗せされている。海峡の外からアジアへ原油を輸送するためにタンカーを手配するには、およそ400万~500万ドル(約6億5000万~約8億1000万円)が必要だ。一方、海峡内からアジアへ原油を運ぶ船舶を確保する費用は800万~1000万ドルと、2倍に跳ね上がるとリポウ氏は述べている。

過去3週間、通航量は通常のおよそ3分の1で推移しており、現在も航行は続いている。ただ8日午前には、少なくとも4隻の石油・ガスタンカーがホルムズ海峡の通航を試みた後に引き返すことを余儀なくされている。

こうした要因から原油価格は大きく上昇しているが、それでもトランプ氏が了解覚書に署名した直後に取引されていた水準はまだ下回っている。ブレント原油先物は4%上昇し、1バレル78ドル弱で取引されており、了解覚書署名の翌日以来の高値を付けた。言い換えれば、市場は海峡が前日よりも開かれていないと見なしているわけだが、一方で原油の流れ自体は依然として続いている。

在庫の問題

仮にその原油の流れが止まれば、米国の石油市場に深刻な問題が生じる可能性がある。

米国の緊急石油備蓄である戦略石油備蓄(SPR)は、戦争勃発以降、海峡で失われた大量の原油を補うために大幅に取り崩されてきた。SPRは現在3億1950万バレルとなっており、戦争前の水準から23%減少。レーガン政権が1983年に備蓄を開始して以来の最低水準となっている。

そのため米国は、厳しい気象災害やホルムズ海峡の再度の全面封鎖に直面した場合、不安定な立場に置かれることになる。

さらに重要なのは、民間の石油在庫も危機的な水準にとどまっていることだ。米国のパイプラインの要衝であるオクラホマ州クッシングの在庫は、依然として運用上のストレス水準を下回っている。クッシングの在庫は先週約70万バレル増加したものの、依然として2000万バレル未満であり、この水準では施設から国内各地の製油所へ原油を送り出すことが困難になる。

これを受け、トランプ氏は石油在庫の低水準が米国経済に打撃を与えかねないと警告。自身がフーバー元大統領のようになる恐れがあるとの懸念を示した。

「私は経済的大惨事を見たくなかった」。トランプ氏は6月下旬の主要7カ国首脳会議(G7サミット)でそう述べた。「この状況が続いていたら、それが実現していた可能性がある」

投資家は慎重な姿勢を見せた。米国株は取引開始時に大きな反応を示さなかったが債券市場は反応し、米国の10年国債利回りは4.57%まで上昇した。これは5月下旬以来の高水準。当時は原油価格が戦争時のピークに達し、停戦が崩れるとの見方が強まっていた。

2期目の政権を通じて自ら示してきたように、債券利回りが「高騰」すると、トランプ氏は市場の声に耳を傾ける。

本稿はCNNのデービッド・ゴールドマン記者による分析記事です。

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