中国「民族団結法」施行に抗議、チベット人が米で焼身自殺

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2021年9月21日、ニューヨークで開催された第76回国連総会の期間中、総会議場内から見た国連本部ビル。(エドゥアルド・ムニョス/AP通信提供)

2021年9月21日、ニューヨークで開催された第76回国連総会の期間中、総会議場内から見た国連本部ビル。(エドゥアルド・ムニョス/AP通信提供)

By Andrew Salmon – The Washington Times – Friday, July 3, 2026

 【ソウル】中国の「民族団結進歩促進法」に抗議し、チベット人男性が2日、米ニューヨークの国連本部前で焼身自殺を図り、死亡した。

 中国政府は、1日に施行された同法について、国内56民族に共通の国家アイデンティティーを形成するとともに、全国各地の均衡ある発展を図ることを目的としていると説明している。

 一方、批判的な立場からは、少数民族を支配的な漢民族文化へ同化させる政策を加速させることが真の狙いだとの見方が出ている。専門家の一人は、中国共産党の根底にある分離独立や社会不安への歴史的な警戒心を反映した法律だと指摘する。

 焼身自殺したのはロブサン・パルデン氏(別名ロブガ・ランゼン)。同法に抗議するため自ら火を放った。同様に中国統治に反発して焼身自殺したチベット人は、これまでに150人以上に上る。

 非政府組織(NGO)「チベット・アクション・インスティテュート」によると、同氏は自殺直前、「中国共産党は政策としてチベットで大量虐殺を実施し、チベット民族を消し去ろうとしている」と訴えた。さらに、「チベット国内で文化、宗教、言語を守るために全力を尽くしている人々に、私から言えることはほとんどない。私は祖国のためにこれを行う」と語っていた。

 米国で約20年間暮らしていたとされるウーバータクシー運転手の同氏は、チベット僧の法衣をまとい、歩道にチベット旗を掲げた後、自らに火を放った。

 救急隊員が病院へ搬送したが死亡した。52歳だった。

 民族団結法について、中国国営新華社通信は「56民族すべての団結と共同繁栄を促進することを目的としている」と報じた。「中国が2035年までに近代化をほぼ実現する目標に向けた最終段階に入る中で制定された」と説明している。

 また、「国家統一と民族団結を守ることは全ての中国国民の責任であり、いかなる民族に対する差別や抑圧も禁じる」と規定している。

 しかし、とりわけチベット人らはこうした説明に異議を唱えている。

 米国を拠点とするチベット人活動家で、チベット亡命議会元議員のドルジェ・ツェテン氏は、「この法律は、チベットで実施されている植民地主義的な寄宿学校政策を制度化するものだ」と主張。「民族団結を促進するどころか、チベット語や文化、民族的アイデンティティーを守る活動を犯罪化し、チベット民族固有のアイデンティティーを消し去ることを目的としている」と批判した。

 一方、中国寄りの立場からは、義務教育で標準中国語(普通話)を学ばせることは、少数民族が教育や行政、ビジネス分野で活躍するために必要な能力を身に付ける手段だと主張している。

 活動家らによると、中国政府が設置したチベット人児童向け寄宿学校では、4歳前後の幼児から中国語中心の教育課程が導入され、チベット語教育は最小限に抑えられている。その結果、親子間の意思疎通が難しくなり、民族的アイデンティティーの希薄化が進んでいるという。

 NGO「チベット・アクション・インスティテュート」は、この制度の影響を受けた子供は100万人を超えるとしている。

 ツェテン氏は、生前のパルデン氏について、「生涯をチベット独立運動にささげた人物だった」と語った。

 インドに次ぐ世界第2位の人口を抱える中国では、大多数が漢民族である。2020年の国勢調査によると、回族、朝鮮族、満州族、モンゴル族、チベット族、ウイグル族、チワン族など55の少数民族の人口は約1億2500万人で、全人口の9%弱を占める。

 多くの少数民族の統合は容易に進められているように見えるが、チベット族やイスラム教徒のウイグル族では反発が根強い。

 両地域では暴動や漢民族への襲撃事件が発生し、中国政府は強硬な取り締まりを実施した。新疆ウイグル自治区では多数の戦闘員がシリアなどでイスラム武装勢力に加わったとされ、中国の警戒感を一層強めた。

 その一方で、中国政府による取り締まりは、人権侵害だとして海外の活動家組織から厳しい批判を受けている。

 国際人権団体アムネスティ・インターナショナルのアジア地域責任者サラ・ブルックス氏は声明で、「中国当局には少数民族とその文化を保護する人権上の義務があるが、この法律はその義務に逆行している」と指摘した。さらに、「多様性を尊重するどころか、ウイグル族やチベット族、モンゴル族などに対し、漢民族文化を中心とした国家が定義する単一のアイデンティティーを受け入れるよう強いるものだ」と批判した。

 中国とチベットの関係は長年にわたり緊張が続いている。

 18世紀には中国の清朝がチベットを支配下に置いた。19世紀にはアヘン戦争や列強の侵略、太平天国の乱によって清朝は大きく揺らいだ。太平天国の乱は、宗教戦争であり、第2次世界大戦に次ぐ死傷者を出した凄惨な戦争とされている。1911年に清朝が崩壊し中華民国が成立すると、ラサは1913年に独立を宣言した。中華民国は1916年以降、混乱に陥っていった。

 チベットの独立状態は、中国共産党が国共内戦に勝利し、1948~49年に中国本土を掌握するまで続いた。国民党政府は台湾へ移り、対立政権を樹立した。

 中国共産党政権は本土全域の支配を強力に進めた。

 1950年、人民解放軍はチベットに侵攻し、51年に併合した。中国はこれを「平和解放」と呼んでいる。

 1959年には米中央情報局(CIA)の支援を受けたチベット蜂起が鎮圧され、現在はダライ・ラマ14世を精神的指導者とする亡命政府がインド北部ダラムサラに置かれている。

 その後、中国政府はチベット自治区を設置し、土地の再配分を進める一方で、漢民族の移住を推進した。現在、漢民族は人口の約12%を占めるとされる。

 一方、ダラムサラの亡命チベット人社会や世界各地に離散したチベット人らは、中国政府の政策に反対する活動を続けている。

 この法律が海外にも適用される可能性への懸念から、欧州連合(EU)や米国務省が反対姿勢を示し、台湾でも対抗措置の検討が進められている。

 これに対し、新華社通信は、この法律について「分離独立勢力による破壊活動から中国国民を守るための正当な主権行使だ」と主張している。

 同法は、「暴力テロ、民族分離主義、宗教過激主義」と闘うことを目的とし、「これらの活動を組織、計画、実行、扇動、資金援助した者に刑事責任を負わせる」としている。

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