裸のお風呂は「空気を読んで」 日本の温泉ソムリエが語る赤裸々な真実

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2026.06.16 Tue posted at 15:29 JST

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阿寒摩周国立公園内にある阿寒湖畔温泉/Iain Masterton/Alamy Stock Photo

阿寒摩周国立公園内にある阿寒湖畔温泉/Iain Masterton/Alamy Stock Photo

(CNN) 伊豆半島の黒根岩風呂は、太平洋から打ち寄せる波に手が届きそうな岩礁の上にある。

ここ北川温泉は、小さな漁港の町。月曜の午後に欧米からの観光客を見かけるような場所ではない。だから温泉施設の浴場に入っていく外国人女性を見て、私は少し驚いた。

女性は素早く周りを見てから、50℃をゆうに超える熱い湯の噴き出し口に直行した。

そして迷わずお湯を手ですくい、自分の体にかけ始めた。

「熱い!熱い!あつい!」——女性は小さく飛び跳ねながら金切り声を上げる。肌がみるみる赤くなった。

太平洋を臨む北川温泉の黒根岩風呂/Miki Lendon

女性が試みたのは「かけ湯」と呼ばれる行動だ。風呂に入る前には、だれもが体に湯をかける。だが温泉の入り口付近に掲げられた善意の注意書きが、女性を混乱させたようだ。そこにはぎこちない英語で「入浴の前にお湯をかぶってください」と書いてあった。

女性はその通りに従ったのだが、意味が違った。

「そのお湯じゃない――やけどしますよ!」と、私は湯船から叫んだ。「桶(おけ)を使って、風呂のお湯をすくうのです。噴き出し口ではなく」

私は日本各地の旅先で、絶えず同じような場面を目にする。外国人旅行者にとっては、こういう小さな誤解が旅全体を台無しにしかねない。

そしてまた、日本の温泉には裸での入浴からタトゥー(入れ墨)まで、目に見えないわなと暗黙の作法があふれている。

これは、私が温泉に心ひかれた理由のひとつでもある。私は日本で生まれ育ったが、大人になってからはほとんどずっと米国暮らしだった。久しぶりに帰国した私は、気づくと外国人のような目で温泉文化を再発見していた。

当初は、知らない人たちと裸で入浴することにさえ改めて抵抗を感じた。しきたりや入浴のしかた自体を学び直すうちに、温泉への好奇心が強まった。

知識が増えるにつれ、外国から訪れる人々にも、温泉を本来の意味で(サバイバル試験としてではなく、くつろぎの体験として)楽しんでほしいと思うようになった。

そんなわけで、私は温泉ソムリエの資格を取った。そう、これはれっきとした実在の資格だ。

最高の温泉を求め、これまでに北海道から沖縄まで3000キロ以上を旅して歩いた。温泉宿で働いたこともある。

温泉入門——厳格さの理由は

福島県土湯温泉の山水荘/Noriko Hayashi/The Washington Post/Getty Images
福島県土湯温泉の山水荘/Noriko Hayashi/The Washington Post/Getty Images

福地温泉は名古屋から列車とバスで約5時間の深い山あいに位置し、宿は11軒だけ。夜になると柔らかいオレンジ色の光の下に宿が浮かび上がり、幻想的な、時をさかのぼったような雰囲気を醸し出す。

街にすっかりほれ込んだ私は、ここで初めて温泉での仕事に就いた。職場は170年前の農家を改装した「草円(そうえん)」という宿だった。15の客室と三つの風呂があり、15人ほどの従業員が、宿泊客に最高の経験をしてもらおうと心を砕く。

だが、伝統や習慣にうとい外国人客を相手に苦労する場面もある。

草円は山深い場所にありながら、外国人旅行者の人気スポットとなっている。7年前に私が働いていたころの宿泊客は日本人と外国人が7対3の割合だったが、昨年訪れた時にはそれが逆転していた。

福地温泉全体でも同じことが起きている。英語を話せるスタッフの増員が遅れ、外国人の急増にまったく追いついていない。宿にとって外国からの客は大歓迎だが、対応に困ることも多い。

何が問題なのか。伝統的な温泉宿に泊まるのは、欧米式のホテルに滞在するのとはまったく別の体験だ。宿泊予約サイトのアゴダやブッキング・ドット・コムで部屋を取るのは簡単だが、サイトには宿の暗黙のルールやしきたりが書かれていないことも多い。

まずは、宿がほとんど軍隊のようなスケジュールで動いているという点だ。チェックイン、夕食、入浴、朝食、そしてチェックアウトの時間が決まっている。そう、きっかりその時間に、その場にいなければならない。

すべては日本の「おもてなし」というコンセプトに立ち返る。

正確な到着時刻を知りたいのは、スタッフが万全の態勢で出迎え、出来立てのお茶とお菓子を出すため。夕食の時間が決まっているのも、コース料理を完璧な仕上がり、完璧なタイミングで提供するためだ。

到着が遅れたら、完全無欠の計画全体が破綻(はたん)してしまう。窮屈な規律のように見えて、実はスタッフが万全のおもてなしの構想を保つため、全力で奔走しているというわけだ。

私はそれを目の当たりにした。ある日の昼前、草月で同僚の男性がこちらへ突進してきた。真っ赤な顔で目を大きく見開き、明らかにパニックを起こしている。

同僚は早口で「今すぐ女湯に行ってくれ!」と声を張り上げた。

どうやら、女湯の清掃に行ったところ、外国人客がまだ入浴していたらしい。そう、裸の女性たちにばったり遭遇してしまったのだ。

私はすぐに駆けつけ、女性客たちには10時の清掃までに入浴を済ませるよう伝えていたことを確認したうえで、失礼を丁重にわび、急いで出てほしいと念を押した。

旅館ではタイミングがすべてだ。少人数の従業員にぎっしりのスケジュールという状況では、1分ごとが勝負。スケジュールがきちんと守られなければ、こういうアクシデントの恐れがあるし、実際に起きてしまう。

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