米シンクタンク、アジアでの同盟縮小を提唱 「中国に戦略的利益」と反論も

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ドナルド・トランプ大統領(左)は、2025年8月25日、ワシントンD.C.のホワイトハウスに到着した韓国の李在明大統領を出迎えた。(AP通信/アレックス・ブランドン撮影、資料写真)

ドナルド・トランプ大統領(左)は、2025年8月25日、ワシントンD.C.のホワイトハウスに到着した韓国の李在明大統領を出迎えた。(AP通信/アレックス・ブランドン撮影、資料写真)

By Andrew Salmon – The Washington Times – Sunday, September 27, 2026

 【ソウル】米国のアジア同盟国が長年懸念してきた米国の戦略案が、具体的な形を取った。

 その構想は、インド太平洋の最前線から米軍を後退させ、距離があり守りやすい防衛線に移す一方、地域での同盟関係を解消するというものだ。

 この構想は、米シンクタンク「ディフェンス・プライオリティーズ」の上級研究員、ジェニファー・カバナー氏が「アジアのための第2列島線戦略」と題した報告書で提唱したもので、物議を醸している。

 この報告書は9月に発表され、インド太平洋地域の各国政府に衝撃を与えた。トランプ大統領が米国の軍事力と影響力を西半球に振り向ける一方、中国や北朝鮮との関係を強化しようとしている時期とも重なった。

 この報告書は、「米国第一」と新孤立主義的な考え方を組み合わせたもので、各国の関心を集めている。

 日本の英字紙ジャパン・タイムズは「ディフェンス・プライオリティーズが提唱するインド太平洋での優先順位は間違っている」と批判した。韓国の有力紙、朝鮮日報も「米シンクタンク、韓米同盟の利益は非常に小さい、終了すべきだと主張」と報じ、懸念を示した。

 元韓国海軍将校のユ・ジフン氏は「注目を集めているのは確かだ」と語った。同氏はこの報告書を「大きな関心を持って」読み、そこでは「米国のこの地域への関与が長期的にどのような信頼性と形を取るのか」という問題が提起されていると指摘した。

 一方、この構想は中国に重要な戦略的地理を明け渡し、全領域の安全保障について、米国が同盟国の能力を利用できなくなるなど、深刻な結果を招くとの指摘もある。

■後退の時か

 カバナー氏は「アジアに軍事力を置いて守るべき米国の中核的利益は2つある。米本土防衛と、重要な経済市場や交易路の確保だ。最初の優先項目には軍事力の前方展開はほとんど必要ないが、第2の優先項目には小規模な空軍・海軍の展開が有益だ」としている。

 同氏は、脆弱な第1列島線から米軍の戦力を後退させ、遠方にありながら防衛しやすい第2列島線に移すことで、「米国の軍事的負担と中国との戦争のリスクを減らしながら、米国の利益を守る」ことを提唱している。

 米国は「防衛上のコミットメントを絞り込み、台湾について明確な不介入の立場に転換し、相互防衛同盟を終了させ、その代わりに、より限定的で柔軟な安全保障パートナーシップを交渉すべきだ」と同氏は主張する。

 アジアに駐留する9万人の米兵は、「中国沿岸からもっと離れた、生存性の高い基地に集約し、米国の経済的利益の確保と、米国が関与し続けていることを示す役割を担うべきだ」と提案する。

 東アジアの戦略的地形は重要だ。経済地理の観点から見ると、中国、日本、韓国、台湾が世界の製造業を支配している。

 地政学的には、第2次世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争で米軍はアジアにおいて厳しい試練を受けた。現在も朝鮮半島や3本の列島線に展開し、米本土を段階的に防衛する態勢を取っている。

 カバナー氏は、現在「米国にとって唯一、力が均衡する重大な競争相手」は中国だと指摘する。

 中国海軍は、同国の長大な沿岸部に沿って配備されている。南シナ海では、中国はベトナム、フィリピンに圧力をかけ、国際法に抵触し、環礁や岩礁に陸・海・空の基地網を構築して海域を支配している。

 一方、東アジアの他の地域では、地理的条件が米軍に有利に働く。同盟国の領土に置かれた拠点から、現在の商業航路であり、将来的に海軍のチョークポイントとなり得る海峡を監視し、射撃管制を行うことができるからだ。

 韓国は中国と北朝鮮に向き合い、済州島は東シナ海、黄海、日本海が交わる地点を見渡す位置にある。

 シンガポールは、マラッカ海峡の南端を押さえている。同海峡は中国からインド洋へ向かう航路だ。

 シンガポールの東には第1列島線がある。フィリピンと台湾はバシー海峡を押さえ、日本の南西諸島は台湾の東側と宮古海峡を守り、日本北部の島々はロシア東岸をにらんでいる。

 関与する戦力は米国と同盟国の海軍だけではない。米海兵隊と陸軍は、南西諸島やフィリピンで、機動式ロケットシステムを使った分散型の沿岸防衛戦術の訓練を行っている。

 しかし、こうした前方展開部隊は、中国、北朝鮮、ロシアからの攻撃が届く範囲内にある。

 韓国に駐留する米兵は北朝鮮との戦争のリスクに直面しているが、カバナー氏は、これは「米国の中核的利益」に含まれないと指摘する。米軍は朝鮮半島外で任務を遂行する「戦略的柔軟性」が限られている。

 また、カバナー氏は、台湾防衛を約束する米国のコミットメントは「ますます維持困難になっており、米国の利益に比べてはるかに大きなリスクを伴う」と主張。台湾をめぐる紛争は「甚大で制御不能なものになる」とし、中国による台湾占領のコストは「戦争のコストを正当化するほどではない」と強調した。

 台湾の世界有数の半導体メーカーを失うことについても、同氏は軽視している。米国は半導体分野で豊富な知的財産を保有しており、半導体製造を国内化できるという。

 フィリピンについては、「岩や礁」をめぐって米国が中国との戦争に引きずり込まれる可能性を懸念し、フィリピン軍の弱点を列挙している。

 オーストラリアについては、米国が得られる利益は小さいとし、上記の同盟国と同様に、米国は「重大な結果を招くことなく」同盟関係から離脱できると考えている。

 日本については、より複雑だ。中国の影響圏に入るのを防ぐため、カバナー氏は一部の米軍基地を維持する一方、日本自身の防衛能力を強化することを提案する。

 同氏は、米軍を第2列島線の「より生存性の高い基地」に集約すべきだと提案する。第2列島線は、日本の小笠原諸島、マリアナ諸島(グアムを含む)、パラオ、インドネシア東部の一部地域から成る。

 カバナー氏によると、これらの地域には、台湾や南シナ海のような紛争の「火種」となりやすい場所はない。

 第3列島線は、アリューシャン列島からハワイ、ミッドウェー、米領サモアを経てニュージーランドに至る。

 3本の列島線のうち、第1列島線が最も密集しており、第3列島線が最も分散している。

 カバナー氏の提案は、1945年以降の地域の安全保障体制を解体することになるが、一部の専門家は同氏の主張に理解を示した。

 明治学院大学の外交政策専門家、ポール・ミッドフォード氏は「米国が過度に前方展開しているという点では、彼女の指摘は正しい。この論考が共感を呼ぶもう一つの理由は、イラン攻撃が不人気なだけでなく、米国の能力に疑問を生じさせていることだ」と指摘した。

■反論相次ぐ

 シンガポールを拠点とするパシフィック・フォーラムの研究員、アレックス・ニール氏は「第1列島線における防衛上の覇権を中国に譲り渡すなど、とんでもないことだ。中国にとっては巨大な利益となる。米国が第2列島線に依存すれば、中国軍は米本土にさらに近づくことが可能になる」と語った。

 現在の米軍駐屯地は先制攻撃に対して脆弱であり、「確実な報復能力が必要だ」と同氏は述べた。

 ユ氏は、戦力の生存性を高めるには「施設の強化、機動性、水中戦力、分散作戦への依存度を高めることが今後ますます重要になることは間違いない」と語った。

 シンガポールの南洋理工大学ラジャラトナム国際学研究所の上級研究員、ドリュー・トンプソン氏は、この報告書は発表時期を誤ったようだと指摘した。米国は長年、防衛投資が不足している同盟国に不満を抱いてきたが、状況は変化しているという。

 「見捨てられるとの脅威が一部の同盟国を目覚めさせ、国防費を増やし、新たな防衛能力への投資を進めさせている。これによって、同盟国としての価値が高まる」と同氏は述べた。「より持続的で相互利益のある同盟関係につながり、米国が同盟国を完全に見捨てる動機を打ち消すことになる」

 パシフィック・フォーラムの地域問題担当ディレクター、ロブ・ヨーク氏は、その後に予想される結果が見落とされていると指摘する。

 「米国が条約上のコミットメントを格下げしながら経済的利益を確保できるという考えは、米国が後退した後に波及効果が生じないことを示唆している。信頼の崩壊も、投資の縮小も、親米派の政治勢力が信用を失い、中国への融和を主張する勢力に取って代わられることもない。そして、中国政府がこれらの国々を威圧し、批判者を黙らせ、中国共産党政権に有利な政策を採用させようとする動きが激化することもない、というわけだ」

 ユ氏は、結果は地殻変動のような規模になる可能性があると指摘した。

 米国の関与縮小は、「独自の核能力を保有しようとする強い動機」を生み出す可能性があるという。

 反感を買う可能性もある。

 ユ氏は「米国が同盟を終了させた場合、その後、基地や港湾の使用を交渉しようとしても、それ以前と同じように使用できると想定すべきでない。基地や港湾の使用は部分的には、同盟への信頼によって成り立っている」と述べた。

 安全保障問題が新たな領域に広がっていることを考えれば、同盟の重要性はますます高まっている。

 ソウルを拠点とするトロイ大学の国際関係専門家、ダン・ピンクストン氏は「20世紀まで、米国が孤立主義を取っていたのは、巨大な海に囲まれていたからだ。しかし、軍事技術、特に弾道ミサイルによって世界は狭くなり、米国が孤立しても問題ないという考えは消えた」と述べた。

 ピンクストン氏は、宇宙、サイバー、サプライチェーン(供給網)、麻薬、テロ、移民、環境といった国境を超える安全保障上の課題を挙げ、世界的な関与から再度、離脱することを議論するのは「ナイーブだ」と警告した。

 「世界はより統合され、ネットワーク化されており、それにはパートナーとの連携が必要だ。同盟はかつてないほど重要になっている」

 ミッドフォード氏も「東アジアにおける米国の同盟を破棄するのは過剰反応だ」とこれに同意した。「彼女の主張を穏健な形で実行すれば、米国は地域でより攻撃的でない姿勢を取り、本格的な外交を展開すべきだということになる」

 その具体策として、中国を怒らせている航行の自由作戦を停止し、台湾独立への支持を求める動きを終える一方、北朝鮮に対しては非核化ではなく軍備管理を提案することなどが考えられるとミッドフォード氏は述べた。

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