【東京で公開】「言葉を失った」墓を取り囲むメガソーラー…福島テレビの映画「かげる針路」舞台挨拶で監督が訴えた事

2 ヶ月前 19

福島県内各地のメガソーラーを巡る問題をまとめたドキュメンタリー映画「劇場版 かげる針路」(福島テレビ制作)が7月31日、東京・池袋の「シネマ・ロサ」で上映開始された。

8月1日には、福島テレビ報道部専任部長の井上明監督と、ナレーションを担当した古賀ひかるアナウンサーが舞台挨拶に立った。

映画の内容は

東京電力福島第一原発事故後、福島県は「2040年を目処に再エネ100%」という目標を掲げてきた。原発に頼らず、その“針路”を進むことこそが「福島復興の姿だ」とされてきた。

しかし、急拡大したメガソーラーは、景観破壊や土砂流出といった問題を各地で引き起こし、地元住民が声を上げる事態にまで発展した。

映画で取り上げられたのは、原発事故で大きな被害を受けた浪江町、土砂流出の被害が出た西郷村、市民の心の拠り所である先達山の景観が壊された福島市ーーなどのメガソーラー事情だ。

それぞれの地域の現状を通して、「理想に掲げた”針路”に、いま影が差し始めている」という問いを丹念に描き出している。

「なぜ福島県が狙われるのか」というシーンも印象的で、メガソーラー事業関係者の「福島はおいしい場所」「何をやっても許される」という証言も出てくる。

東京・池袋で映画「かげる針路」の舞台挨拶が行われた(8月1日午後)
東京・池袋で映画「かげる針路」の舞台挨拶が行われた(8月1日午後)

相本啓太

井上監督と古賀アナウンサーが舞台挨拶

8月1日の上映には、71人が足を運んだ。舞台挨拶で井上監督は、「県外の人に多く見てほしい」と語り、その理由を次のように述べた。

「舞台は福島だが、その先には電力を消費している場所がある。福島は原発事故前まで、原発で電力を作って首都圏に送り、経済成長を支えてきた」

「事故から15年経った今、福島は原発に代わるエネルギーの生産地として、メガソーラーに代表される再生可能エネルギーが多く出てきた。それも、福島県外の電力消費地にも送っている。一緒に考えて、問題意識を共有したい」

また、メガソーラー事業者と住民の間にある温度差についても説明。

事業者側は法律の正当性を主張するが、住民側は「生まれ育った故郷が壊されている」ということに対して不満に思っていることから、「両者の視点が大きく乖離したまま、メガソーラーの建設が進んでいる」と語った。

作中で日々のニュース番組で使われている音声を一部で使用していることも明かし、「報道の延長線上に映画があり、今まで届かなかった人にも届けられるようになって嬉しい」と話した。

ナレーションを担当した古賀アナウンサーも、「できるだけフラットに表現すること」を意識したと明かし、「メガソーラー自体が悪いわけではないが、地域の景観が変わっていいわけでもない。いろいろな人の視点が出てくるからこそ、ナレーションに“色を入れない”ことを大切にした」と述べた。

東京・池袋で映画「かげる針路」の舞台挨拶が行われた(8月1日午後)
東京・池袋で映画「かげる針路」の舞台挨拶が行われた(8月1日午後)

相本啓太

視聴した人は「言葉を失った」

8月1日、福島市から映画館に駆けつけた女性(68)は、「浪江町のメガソーラーの光景に目を奪われた」と取材に語った。

墓を取り囲むようにメガソーラーが設置されている様子に、「言葉を失った」という。

福島市での勤務経験がある東京都内の男性(28)は、先達山の光景を実際に見たことがあるといい、「違和感を感じていた」と振り返る。

原発事故後、再生エネルギーに舵を切ること自体に違和感はなく、「社会的にもメガソーラーに反対する人のほうが珍しかったのではないか」と述べた。

ただ、その時に問題が起きるとは誰も思っていなかったとし、「先のことまで考えて判断することの難しさを感じた」と話した。

井上監督は舞台挨拶後、取材に「皆さんが関心を持って見てくれた」と手応えを口にした。

その上で、「夏場の電力需給や中東情勢の緊迫化でエネルギーへの関心も高まっている。このタイミングでぜひ映画を見てほしい」と呼びかけた。

「劇場版 かげる針路」は、東京・池袋の「シネマ・ロサ」で上映中。上映日時や詳細は映画公式ウェブサイトで確認できる。

記事全体を読む