『台湾軍事機密文書が語る中国「抗日戦争」の真相』(新潮社) - 著者: 遠藤 誉 - 橋爪 大三郎による書評

1 ヶ月前 15
台湾軍事機密文書が語る中国「抗日戦争」の真相
『台湾軍事機密文書が語る中国「抗日戦争」の真相』(新潮社)著者:遠藤 誉

≪中国共産党は抗日戦争の中流砥柱(しちゅう)(主力)だ≫。習近平のスローガンで、元は毛沢東の言葉。真っ赤な嘘(うそ)である。中国共産党は日本軍と結託しむしろ国民党と戦っていた。

台湾国史館のデジタルアーカイブが抗日戦争期の軍事機密電文を公開した。それを著者が読解。毛沢東の「721方針」は党拡大に70%、国民党の対応に20%、抗日戦に10%の力を注げとした。共産党軍は日本軍と協定し、攻撃されない。両軍で国民党軍を挟み撃ちしたりした。日本の軍服で日本語を話し、日本軍を装って国民党軍を攻撃しさえした。

本書は重要情報が山盛りだ。西安事変の主役は張学良でなく毛沢東。薄一波は江沢民が親日スパイの子と知りつつ彼を鄧小平に推薦、息子の薄煕来(きらい)をよろしくと頼んだ。スターリン~毛沢東~蔣介石の国際政治の駆け引きも電報からよくわかる。

中国は対日カードに歴史を持ち出すが、歪曲(わいきょく)しているのは当の中国。本書が参照するような史料は国がデータベースにして中国語、日本語、英語で読めるようにすべきだ。中国の人びとも助かるだろう。学問と外交のイロハを教えてくれる遠藤誉氏にいくら感謝しても足りない。
【初出メディア】
毎日新聞 2026年5月9日
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