(CNN) 若きスター選手たちが全盛期の輝きを放ち、自らの時代の到来を宣言しているかのように見えたその夜、サッカー界の世代交代が目前に迫っているかに思われたまさにその瞬間、アルゼンチン代表のリオネル・メッシはカンザスシティーでひとつのメッセージを発信した。
新たな王者になるには、現在の王者を倒さなければならないのだと。
この日の試合を含む今回のワールドカップ(W杯)、そしてこのスポーツ全体においても、メッシは今なお王者の座に君臨する。W杯の舞台に初めて登場してから20年が経過しても、その事実は変わらない。
数時間前には、フランス代表のキリアン・エムバペが歴代W杯得点ランキングでメッシを抜き去っていた。ノルウェー代表のアーリング・ハーランドもイラク戦で2ゴールを決め、鮮烈なW杯デビューを飾っている。この時点で物語はすでに決着したかに思えた。若手の大物二人(エムバペは27歳、ハーランドは25歳)が、来週39歳になるメッシや、41歳のクリスティアーノ・ロナルド(ポルトガル代表のレジェンドのW杯初戦は17日に控えている)に取って代わり、サッカー界最大のスターの座を引き継ぐ準備は整っていたはずだった。
だが夜が終わる頃、メッシは再び歴代W杯得点ランキングでエムバペを上回っていた。そればかりかさらに得点を重ね、自身初となるW杯でのハットトリックを達成。W杯通算16ゴールとし、歴代最多タイでドイツのミロスラフ・クローゼに並んだ。驚くべきことに今やメッシは、アルゼンチン代表史上最年少のW杯得点者であると同時に、最年長のW杯得点者にもなってしまったのだ。
この日の対アルジェリア戦、79分に交代でピッチを後にしたとき、アローヘッド・スタジアムの観衆は総立ちとなってメッシを称(たた)えた。何万人もの人々が、試合前に発生したひどい交通渋滞にも耐えながら、スタジアムに集まっていた。世界最高峰のスポーツの舞台で、この天才のプレーをひと目見るために。

これでW杯では通算16ゴールとなり、歴代最多タイに/Ed Zurga/AP
長い待ち時間は、試合開始からわずか6分で報われることになる――たとえそのプレーが、得点としては認められなかったとしても。
ラウタロ・マルティネスがペナルティーエリア手前で、ゴールに背を向けた状態でパスを受ける。ボールを胸でトラップし、足元に収めると、左側ではボックスへ向かって鋭く走り込むメッシがいた。マルティネスがそこへ鮮やかにパスを通す。これまで何百回となく繰り返されてきたように、インテル・マイアミ所属のスター選手は左足で意のままにボールを操り、ゴールへ切れ込んでそのままネットを揺らした。
残念ながら、メッシはオフサイドだった。そうでなければ単独トップでのW杯歴代得点記録を手にしていただろう。
だがメッシが正式に認められるゴールを決めるまでに、そこから10分とかからなかった。しかもその一撃は、この大会のハイライト映像に必ず残るであろう、とてつもないスーパーゴールだった。
ピッチ中央を抜けるスルーパスを受けたメッシは、ドリブルでボックスへ向かう。アルジェリアの守備陣5人――そう、5人だ――が前後から距離を詰めてくる中、メッシは左へ一歩位置をずらしてから思い切り左脚を振り抜く。約20メートルの強烈なシュートは、GKルカ・ジダンの指先にわずかに触れながらも、そのままゴールネットに突き刺さった。
まさにクラシック。極上そのもの。これこそがメッシ・マジックだった。
後半開始から15分後に決まった2点目では、FCバルセロナの元エースが持つ「点取り屋」の側面を見せつけた。
ボックスの外30メートルから、アレクシス・マカリテルがアルジェリアのGKへ向けて力強い一発を叩き込んだ。シュートはあまりにも強烈で、GKは処理しきれない。そのこぼれ球にいち早く反応したのがメッシだった。アルジェリアDFのまずいポジショニングのおかげでオンサイドとなっていたメッシは、ルーズボールを難なくゴールへ流し込み、アルゼンチンのリードを2点に広げた。
実利的かつシンプル。年齢を重ねたレジェンドならではのゴール。足技と同様に頭脳にも物を言わせる、今のメッシを体現するプレーだった。
3点目は、最初の2点の副産物だった。アルジェリア守備陣は、メッシとそのチームメートたちによって打ちのめされ、崩壊し、意気消沈しているように見えた。カンザスシティーの暑さも体力を奪ったようだった。アルゼンチンが再び前進した際、なぜかメッシはペナルティーエリア際で完全にフリーになっていた。サイドのニコ・ゴンサレスからのパスはメッシから見てやや後方気味だったが、疲労したアルジェリアの選手たちは寄せきることができなかった。メッシは足を後ろへ伸ばしてボールを収め、体を半転すると、そのまま鋭い弾道のシュートを低くコーナーへ突き刺した。伸ばした手がなすすべもなく空を切ったGKジダンはその後振り返り、決定的な場面でミスを犯した守備陣に苛立(いらだ)ちの叫びを上げるしかなかった。
これで勝負あり。相手にとどめを刺す圧巻の一撃だった。
同日、先に行われた試合でエムバペとハーランドが披露したパフォーマンスを考えれば、アルゼンチンの名手にも彼らに匹敵する活躍が期待されていた。
エムバペの2得点は、持ち前のスキルを余すところなく示すものだった。1点目はボックス内への斜めのランニングから生まれた。パスを受け、ダイレクトで放ったシュートは左へ流れて、セネガルGKエドゥアール・メンディの脇を抜けた。2点目では、エムバペが本気になったときに見せる超絶技巧が発揮された。30メートルの位置から放ったシュートは、飛び上がったメンディの手を越えてゴールへ突き刺さるロケット弾。2018年大会王者のフランスに3―1のリードをもたらした。
ハーランドは初のW杯の試合でイラクから2得点を挙げ、ゴール前での決定力を見せつけた。まずは完璧なクロスに滑り込みながら合わせて先制点を決め、さらにイラクのDFによる緩慢なバックパスに鋭く反応してボールへ突進。GKより先に触ってノルウェーの2点目を奪った。ノルウェーはその後4―1で快勝した。
W杯でスターたちが輝いたこの日は、ついに世代交代が訪れたのではないかと思わせるのに十分だった。メッシとロナルドはあまりにも長くこのスポーツを支配してきた。ともにW杯出場は6度目を数える。この間、彼らの後継者と目される選手たちが次々と現れては消えていった。
エムバペは確かに、高みに座る彼らの正統な後継者に見える。27歳にしてW杯優勝を経験。レアル・マドリードという世界屈指のクラブの中心選手であり、数々のタイトルを獲得し、今大会得点王の座を運命づけられているかのようだ。ハーランドもまた、純粋なストライカーとして世界最高の存在だと自ら主張できる選手だ。点取り屋の中の点取り屋は、クラブレベルですでにほぼ全ての栄冠を勝ち取っている。
彼らは間違いなくまばゆい輝きを放つスターだ。しかし、残り11分での交代でピッチを後にし、カンザスシティーの熱狂的な観衆の声援に包まれたとき、メッシは証明してみせた。エムバペやハーランドをはじめとする選手たちは確かにスターかもしれないが、唯一無二の「太陽」は依然としてメッシであり、サッカーという名の惑星系は今なお彼を中心に回っているのだということを。
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本稿はCNNのカイル・フェルドシャー記者による分析記事です。

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