停電、断水、熱中症、コロナ感染━━生かされていない災害大国の「教訓」

2 ヶ月前 6

7月28日、震度7の地震が熊本県を襲った。

この原稿を書いている現在、8000人以上が避難所での生活を余儀なくされている。何より心配なのは、この猛暑の中、停電、断水が起きているということ。

しかも、このタイミングで被災地を40度を超える酷暑が襲っている。どうかこれ以上人命が奪われないようにと祈ることしかできないが、8月2日には初めて災害関連死の疑いのある死者が確認された。車中泊をしていた70代の女性が亡くなっていたことがわかったのだ。車のガソリンは切れ、クーラーは止まった状態。熱中症の疑いがあるという。

あまりにも痛ましいが、驚くのは、報道によると避難所に指定された学校の体育館に、エアコンが設置されているところが熊本県では2割ほどしかないということだ。 

災害は当然ながら季節を選ばない。極寒の冬でも猛暑でも、できるだけ快適に過ごせるよう、命や健康を守れることが大前提として指定されているのだと思っていた。そして停電に備えて発電機や十分な燃料も準備されているのだと。が、実態は違うようである。このことに、「なぜ?」という問いが止まらないのは私だけではないはずだ。

また、テレビなどで目にする避難所の光景が、31年前の阪神淡路大震災と変わらず仕切りなし・雑魚寝であることにも愕然とした。この31年間、この国は幾度、過酷な災害に見舞われてきただろう。そしてどれだけの地域が「被災地」となってきただろう。特に東日本大震災では、津波から逃れて助かった高齢者が寒い避難所で次々と命を落としていったことが知られている。それなのに、これまでの教訓が生かされていないことに怒りすら込み上げた。しかも宇城市の避難所ではコロナ感染も確認されている。

地震から6日後、高市首相は被災地入りしたが、上空から手を合わせ、また選別された避難所で選別された被災者に話を聞き感謝され握手という流れには、「映え動画撮影のため行った?」と疑問の声があちこちから上がっている。

そんな状況を受け、多くの人が他国の例を挙げ、対応の遅さ・まずさを批判している。例えば2024年の台湾の地震では3時間後に避難所に個室型のテントが用意されたとか、イタリアでは48時間以内にトイレ、キッチン、ベッドを避難所に設置する「TKB48」という合言葉があることなどなど。それなのに周回遅れの災害大国・ジャパン。

そういうものを見ていると、「非常時」にこそ、政治の弱い部分、もっと言えば「ダメな部分」が剥き出しになるんだな……と思う。

報道によると、国は「ホテル避難」の手配を急いでいるそうで、一刻も早く快適な場所で過ごしてほしいが、それを待つ間にも多くの人が体調を崩している。

さて、体育館へのエアコン設置率が低い熊本県だが、今年3月、熊本市の陸上自衛隊健軍駐屯地に長距離ミサイルが配備されたことを覚えているだろうか。反撃能力のあるミサイルの国内配備は初めてということで、先制攻撃を防ぐ狙いがあるということだが、地元住民からは「標的にされる」など不安の声が上がっている。そんなミサイル「12式地対艦誘導弾能力向上型」にかかる予算は、なんと1770億円。

「ミサイルよりもエアコンを!」

そう叫びたくなるのは私だけではないだろう。

そして思い出すのは、18年7月、IR実施法が採決された参議院本会議で、当時自由党だった山本太郎議員、森裕子議員、そして「沖縄の風」の糸数慶子議員が「カジノより学校にエアコンを!」「カジノより被災者を助けて!」という垂れ幕を演壇で掲げたことだ。

その直前、この国を襲ったのは西日本豪雨。10府県に甚大な被害をもたらし200人以上の死者が出ていた。しかし、豪雨が発生し、20万人に避難勧告が出される中、自民党議員らは「赤坂自民亭」と名付けて宴会を開催。その様子を嬉々としてSNSにアップするなどしていたことから宴会によって災害対策の初動が遅れたと大きな批判が集まった。

それから約2週間後、IR実施法が採決されたことに対し、「カジノどころじゃないだろう」という怒りを表明したのが3氏の垂れ幕だったのである。

8年前のあの時、声が届いて全国の学校にエアコンが設置されていたら。せめて避難所指定されている体育館だけでも設置が進んでいたら、今、避難所にいる人は少なくとも熱中症の危険にこれほど晒されることはなかっただろう。せっかく助かった命から、猛暑による死者が出ないことを日本中がこれほど祈ることもなかっただろう。

だからこそ、今、「ミサイルよりもエアコンを!」と心から叫びたい。

ちなみにこの手のスローガン(「武器よりメシ」系)、私の周りの非リベラル・デモとか行かない系友人にはずっと「意味不明」と言われていたのだが、熊本地震後に同様の話をしたところ、「まったく本当にその通り!」と激しい共感の嵐が吹き荒れ、「ほんとにミサイルなんかよりエアコンだよ!」とこれまた賛同の雨あられだったのである。

平常時では「は?」と冷たくあしらわれたのに、非常時には俄然輝き出すスローガン。リベラル界隈の言葉の効力は非常時には存分に発揮されるという現実に、目から鱗な体験をしたのだった。

そんな「それどころじゃない」系スローガンから頭に浮かぶのは、7月末に閉会した今国会だ。

国旗損壊罪や皇室典範改正、国家情報会議設置など、軒並み「そんなことより今政治が取り組むべき課題は別にあるのでは?」「なんで物価高対策じゃなくて国民の1%も望んでいないどころか考えたこともないようなことをそこまで最優先に?」と誰もが突っ込みたくなる法案目白押しの国会。申し訳ないが、私には国会での議論の多くが「貴族の遊び」のように見えてしまった。

なぜならこの7月、私の属する「反貧困ネットワーク」へ寄せられたSOSはこの数年で最多の約90件となっていたからである。

この数は、たまたま支援に辿り着いた氷山の一角だろう。4年以上にわたる物価高騰で、食べられない、家賃が払えない、ライフラインが止まったなど命の危機に晒される人々はひっそりと、しかし確実に増加している。

前回の原稿で、困窮者が入所させられる無料低額宿泊所について書いたが、なんとその中には、エアコンがない施設もあると聞いて愕然とした。北海道や東北ではない。埼玉県での話だ。

7月に発表された国民生活基礎調査によると、「生活が苦しい」と回答した世帯は55.4%。世帯別で見ると、児童のいる世帯では61.5%、母子世帯では82.1%が「苦しい」と回答している。どの世帯でも3年前の調査より数値が悪化しているが、特に児童・母子世帯は7%近くアップ。4年以上にわたる物価高騰で、庶民の生活はより追い詰められている状態だ。

8月1日からは食品などがさらに2300品目値上げ。秋には値上げのピークが来るという。

それだけではない。同日から高額療養費制度の自己負担上限額の引き上げも始まった。

東京では、家賃の高騰も止まらない。

「生きていけない」

そんな声が貧困層だけでなく、中間層からも上がっている。

それなのに、政治は庶民の暮らしにはあまりにも無関心に思えてしまう。

だからこそ、被災地のためにも声を上げていきたい。

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