乳児期の記憶が残りにくい「脳のしくみ」の一端を解明

10 時間前 1

赤ちゃんの脳は「白紙」ではなく、むしろ「配線だらけ」だった

私たちはよく、赤ちゃんのを「白紙」にたとえます。

生まれたばかりの脳にはまだ何も書かれておらず、経験を重ねることで、少しずつ記憶や知識が書き込まれていくというイメージです。

しかし今回の研究は、少なくとも記憶に関わる「海馬CA3回路」という脳領域について、このイメージとは違う可能性を示しました。

海馬は、記憶の形成に重要な脳領域です。

その中でも「CA3」と呼ばれる領域は、記憶を保存したり、断片的な手がかりから過去の出来事を思い出したりする働きに深く関わっています。

研究チームは今回、「生後まもないマウス」「若いマウス」「成体マウス」という3種の海馬CA3を調べ、神経細胞同士のつながりを詳しく記録。

3種のマウスの脳領域を観察した画像がこちら。赤ちゃんマウスが最も接続過多だった】

すると、生後まもないマウスのCA3ネットワークは、予想に反して非常に密につながっていました。

しかも、そのつながり方は整理されたものというより、局所的でランダムなものに近い状態でした。

ところが成長するにつれて、神経細胞同士の過度な接続は減っていきます。

一見すると、脳の機能が落ちているようにも思えます。

しかし実際には、これは脳が効率を失っているのではなく、不要な接続を刈り込み、より精密なネットワークへ作り替えている過程だと考えられます。

研究では、CA3内の接続確率は、生後初期から成体にかけて大きく低下していました。

つまり記憶回路は、白紙の状態から線を書き足すように作られるのではありません。

むしろ最初は過剰に線が引かれており、そこから不要な線を消して、使いやすい形に整えられていくのです。

研究者たちはこの状態を、白紙を意味する「タブラ・ラサ」ではなく、最初から満たされた板を意味する「タブラ・プレナ」に近いものとして捉えています。

赤ちゃんの脳は空っぽなのではありません。

むしろ、最初から多くの神経接続を備えた“配線だらけ”の状態で始まっている可能性があるのです。

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