ニューヨーク(CNN) ホルムズ海峡の通航が麻痺(まひ)状態を脱したにもかかわらず、燃料価格は依然として高止まりしている。これは金融、政治、経済に深刻な影響を及ぼす厄介な問題だ。
全米自動車協会(AAA)のデータによると、全米のガソリン平均価格は1ガロン(約3.8リットル)当たり4.36ドル(約690円)に達し、この時期としては過去最高となっている。
米各州や欧州が相次いで緊急対策を講じたにもかかわらず、ディーゼル燃料(軽油)価格も先月記録した史上最高値まであとわずか20セントに迫っている。
つまり、イランとの戦争によって引き起こされた石油供給不足が、世界中のドライバーやトラック運転手、農家に影響を及ぼす広範なエネルギー危機へと発展した形だ。
ホルムズ海峡の麻痺状態が解消した効果は出ているが、船舶の航行には依然として極めて大きな危険が伴い、その分コストもかさむ。加えて、ロシアではウクライナのドローン(無人機)攻撃によって製油所が破壊されているほか、紅海ではイエメンの反政府武装組織フーシの攻撃によって重要な海上輸送ルートが混乱している。
米金融サービス会社パイパー・サンドラーのグローバルエネルギー・ストラテジスト、ジャン・スチュアート氏は「戦争は終結していない。平和は訪れておらず、エネルギー供給網は依然として制約を受けている」と指摘した。
原油タンカーの「異常な」運航コスト
安全保障上の問題は、中東から原油を運び出すための莫大(ばくだい)な費用にも表れている。
ロンドンに拠点を置く調査会社クラークソンズによると、昨年、ペルシャ湾から中国に向かう超大型原油タンカー(VLCC)の用船料は1日当たりわずか6万5000ドルだった。
イランとの戦争が始まる直前には、この費用は1日当たり23万ドルに上昇していた。
では現在はどうか。クラークソンズによると、同じ航路でVLCCを借りる費用は1日当たり160万ドルに達している。
これについて、米石油会社ガルフ・オイルのチーフ・エネルギー・アドバイザーを務めるトム・クロザ氏は「常軌を逸している」と指摘した。「タンカーを所有していれば、非常に有利な立場にある。戦争で被害を受けずに済めばの話だが」
とはいえ実際には、無傷で済むタンカーばかりではない。
英海事機関(UKMTO)によると、先週の数日だけでも、ホルムズ海峡では少なくとも原油タンカー2隻を含む複数の商船が飛翔(ひしょう)体による攻撃を受けたと報告している。
保険料や船員への報酬も急騰
だが、費用がかさむのはタンカーの用船料だけではない。
戦闘地域を航行する危険な任務に船員を従事させるための費用も必要になる。
米紙ウォールストリート・ジャーナルによると、一部の海運会社は船員に対し、1回の航海につき最大2万5000ドルを提示している。この金額は、船員の年収を上回る可能性もあるという。
高価な貨物を積んで同地域を航行するリスクを反映し、保険料も急騰している。
同紙によると、石油生産業者がホルムズ海峡を往復する航海に支払う費用は、現在3000万~4000万ドルに達している。
実際の取引価格と金融市場の価格
こうしたタンカーの用船料や船員への高額な報酬、保険料の高騰はすべて、世界中の消費者や企業の負担増につながっている。
以前はペルシャ湾から原油を運び出す費用は1バレル当たりわずか2ドルだったが、クロザ氏によると、現在は約33ドルにまで急騰している。
「相応の量の原油を運び出せてはいるが、それだけを見ていては実態を見誤る。原油を運び出すための費用が途方もない額に達しているからだ」(クロザ氏)
これが、金融市場で取引される原油価格と、現物市場での取引価格との間に大きな開きが生じている理由の一つだ。
例えば、原油の現物を即時に受け取る際の実際の取引価格を示す「デーテッド・ブレント」は、S&Pグローバル・プラッツによると、8日時点で1バレル当たり135.74ドルだった。これは約100ドルのブレント原油先物価格を大きく上回り、4月に記録した史上最高値に迫る水準だ。
こうした現物価格がガソリンスタンドで消費者が支払う価格にも波及している。
スチュアート氏は「米国は孤立して存在しているわけではない。ガソリンを輸入している以上、世界市場の価格の影響を受ける」と説明した。

2 時間前
2







English (US) ·
Japanese (JP) ·