サルも「不気味の谷」に落ちていた

2 ヶ月前 23

不気味の谷は人間だけのものなのか

不気味の谷は人間だけのものなのか不気味の谷は人間だけのものなのか / 左が本物で右がCG/Credit: Martini et al., PLOS Biology (2026)

映画やゲームで、かなりリアルに作り込まれた人間のCGを見て、なんとも言えない不快感を覚えたことはないでしょうか。肌の質感も、まつげの1本1本も完璧に見えるのに、なぜか怖い。笑っているはずなのに、笑っていないように見えるのです。

不思議なのは、もっと出来の悪いCGなら平気だということです。ドラえもんもミッキーマウスも、リアルさで言えばはるかに人間から遠いのに、誰も気味悪がりませんし、むしろ愛されています。

つまり「リアルに近づくほど好かれる」という単純な話ではないのです。ある一点まで近づいたところで、好感度は崖から落ちるように急降下します。そして完全に本物と見分けがつかなくなると、今度はまた戻ってくるのです。

この現象には、ちゃんと名前があります。「不気味の谷」——1970年に日本のロボット工学者・森政弘が提唱した仮説です。グラフに描くと好感度の曲線が途中でV字に深く落ち込むため、「谷」と呼ばれています。

半世紀にわたって、これは人間の心の話として語られてきました。人がCGを見て「気持ち悪い」と答えたり、ロボットに不安を覚えたり——どれも、言葉で気持ちを報告できる相手が前提だったのです。

ここで、素朴な疑問が浮かびます。これは、人間だけのものなのでしょうか。

もし他の動物にも同じ谷があるなら、この現象は「CGを見慣れた現代人の気分」などではなく、脳の奥に埋め込まれた仕組みだということになります。

実は、サルの「顔」については以前から報告がありましたが「サルの視覚的注意は不気味の谷に落ちない」という真逆のタイトルの論文も存在しており、決着はついていなかったのです。そして「体」に至っては、そもそも誰も調べていませんでした。

そこで今回研究者たちは、この謎を解明すべく、高精細なCGのサルを作り上げました。

そのこだわりは細部にまで及びました。

予備実験でサルたちが観察対象の「お尻」を熱心に見ていたことが判明すると、チームはその部位まで解剖学的に正確に作り直しています。

サルの目が審判なのですから、サルが気にするところは手を抜けません。

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