(CNN) イランが米国との新たな戦争に備えていることを示唆し、米政府とその同盟国を公然と脅迫している。トランプ米大統領に現行の紛争の再開を思いとどまらせる狙いがあると見られる。
過去1カ月間、イラン軍司令官らは公の発信を強く打ち出し、大量の新型兵器を保有していると再三主張してきた。今年2月に始まった戦闘行為を米国が再開した場合、これらの兵器を地域外の標的にも使用するとしている。
イラン当局は、紛争が再開されれば標的を拡大すると脅迫。具体的には海底インターネットケーブルの切断、人工知能(AI)データセンターへの攻撃、地域の石油・ガス施設への攻撃といった選択肢を提示している。
イランの精鋭部隊「イスラム革命防衛隊(IRGC)」のモヘビ報道官は先月末、「世界は驚愕(きょうがく)するだろう」と述べ、「我々にはまだ攻撃していない新たな標的がある」と付け加えた。
米国とイスラエルがイランへの攻撃を開始してから9カ月近くが経過したが、紛争は膠着(こうちゃく)状態に突入。トランプ氏の最終目標は不透明で、世界は経済不安に苦しんでいる。現在はイランが自国の存続を、米国がイラン政権に与えた打撃を引き合いに出す形で、双方とも勝利を主張する状況となっている。トランプ政権はイランを屈服させるため新たな経済・軍事措置を試み続けているが、イランは頑としてこれに抵抗している。
「戦争は終わっていない」「IRGCは長期戦に備えている」(モヘビ氏)
イラン国民も戦争の再開を「確信している」。首都テヘラン在住のある住民がCNNに語った。
「誰もがそのことばかり話している…頭の片隅にはいつもそのことがよぎる。今夜なのか、明日なのか。常にその話題ばかりで、少しも休む暇がない。余計に不安が募るばかりだ」と、その住民は明かす。
「毎日毎晩、爆撃がいつ始まるかと身構えている」と、テヘラン在住の70歳の男性は先週CNNに語った。「モバイルバッテリーを全て充電し、水を買いだめし、あらゆる準備をした。攻撃はいつ、どんな日でも再開する可能性があるからだ」
イラン国民は、今後の戦争への不安を率直に語るため、匿名を条件にCNNの取材に応じた。
欧州を標的に
複数の米当局者によると、米軍は新たな攻撃計画を策定している。トランプ氏が米中間選挙の前後を問わず戦闘再開命令を出した場合には、イランのエネルギーインフラや核施設を標的とするために、いわゆる「すべての爆弾の母」と呼ばれる爆弾を使用する可能性もあるとみられている。当該の爆弾「GBU43/B大規模爆風爆弾(MOAB)」は、米軍が保有する非核爆弾の中で最大規模であり、もし使用すれば事態は著しくエスカレートすることになる。
一方イラン軍司令官のアリレザ・シェイク氏は17日、「これらはイラン国民を威嚇するためのプロパガンダツールだ」と主張。「イラン国民こそがすべての爆弾の父だ」と明言した。
イランは攻撃を受けるのを待つのではなく、先制攻撃を行う可能性を示すより攻撃的な軍事ドクトリンを新たに打ち出した。先週、IRGCのソーシャルメディアアカウントは、イランが全国各地で軍事演習を実施し、一度に30発の弾道ミサイルを発射したと報じた。
ワシントン研究所の上級研究員で、地域における米国の外交政策を専門とするファルジン・ナディミ氏によれば、イランが勢いづき、新型の長距離ミサイルを欧州に向けて発射する場合、標的には英国の空軍基地に駐留する米軍や、ドイツのラムシュタイン基地にある兵站(へいたん)拠点が含まれる可能性があると述べた。後者は米国外で最大の米軍基地。
「しかしイランがそうした可能性を実行に移すのは、おそらく事態が極めて深刻にエスカレートしたときのみだろう」とナディミ氏は語った。
ナディミ氏によると、イランは標的命中率を高めるため、より高度で連携のとれたドローンの群れを発射する可能性がある。AIを活用したこれらのドローンはカメラとデータリンクを搭載。相互に通信し、飛行経路や速度を調整することで妨害電波や防空網を回避できるという。
「彼らはまだこれらの能力を実証していないが、過去にこうした技術の開発について議論はしていた」(ナディミ氏)
同氏はまたイランについて、巡航ミサイルの能力を超音速推進にまで向上させようとする可能性もあると付け加えた。これにより迎撃回避能力が高まり、軍事通信と監視衛星の妨害も図れるとしている。
身構える中東地域
国際紛争に関するシンクタンクの「国際危機グループ(ICG)」の上級顧問で中東・北アフリカ担当プロジェクトに携わるアリ・バエズ氏はCNNの取材に答え、イランの司令官たちは不可避とみなす戦闘再開に備えつつ、攻撃の代償を強調することで米国の抑止を試みていると指摘した。
「イラン政府が明確にしたいのは、次の戦闘はより広い戦域で、より少ない制約の下、より致命的な結果をもたらす可能性があるということだ」「しかしイランが抑止力と考えているものを、米政府が挑発と受け止める危険もある。そうなればイラン側にとって避けたい事態である戦争が、より現実味を帯びてくる」(バエズ氏)
米国とイスラエルによる対イラン攻撃後、イラン側の報復は主に近隣アラブ諸国に集中。イランはこれらの国々が米国と共謀していると非難している。
イランはアラブ首長国連邦(UAE)だけで2500発以上のミサイルとドローンを発射した。これはイスラエルを含む他のどの国よりも多い数となっている。UAE国防省の発表によると、同国はこれらのミサイルのほぼすべてを迎撃したという。
先週、イラン最高国家安全保障会議のレザエイ議長は、新たな攻撃があればイランは報復としてUAEを含む地域内の米国の資産を標的にすると警告。UAEの高官も15日、記者団に対し、戦闘が再開した場合に備えて同国はより万全な準備を整えていると述べた。

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