『きみのいもうと』(白水社) - 著者: エマニュエル・ボーヴ - 陣野 俊史による書評

2 ヶ月前 35
きみのいもうと
『きみのいもうと』(白水社)著者:エマニュエル・ボーヴ

そっぽを向かれたダメ男

去年翻訳された『ぼくのともだち』に続いて、今年もボーヴの翻訳に触れることができた。主人公のアルマンは、いまは金持ちの女主人にお金を貰(もら)って、裕福な暮しぶり。だが、彼の昔の友だちリュシアンに出会い、彼の中にかつての貧しかった自分を見い出し、妹マルグリットを知る。

アルマンはマルグリットを誘惑する。どうしてなのか、わからない。アルマンが兄妹に親近感を覚えているのは明らかだが、どうもそれだけではなさそうだ……。そしてクライマックス。アルマンは再び安ホテルへと帰っていく。

エマニュエル・ボーヴはとにかく、ダメ男を描かせると抜きん出た能力を発揮する。この小説もそう。社会からそっぽを向かれた男たちだ。それから誰にもマネのできない描写の力。二十世紀の前半を人気作家として生き抜くことができたのは、偶然ではない。フランス文学のメインストリームからは随分(ずいぶん)と離れているけれど、こんなに面白い作家を発見して、少しずつでも日本語に置き換えてくれる訳者や出版社に感謝したいくらいだ。都会で不器用な暮しをしている人、必読です。渋谷豊訳。



【初出メディア】
日本経済新聞 2006年12月27日

http://www.nikkei.com/
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